就職活動をしている人間にとって、必ず通過しなければならない選考内容の一つに、採用面接があります。
一口に採用面接といっても、様々な場面や形式で行われますが、今回の記事では、新卒一括採用の面接において、企業側が考えている面接の目的について、東証一部上場の大手メーカーに勤める現役人事担当者の見解をもとにご説明致します。
なお、集団面接やグループディスカッションなどの多人数が参加する面接や、いわゆる専門職(例えば、研究職、証券アナリスト、アナウンサー、記者)求人については、今回の記事の内容がそのまま当てはまらない可能性がありますので、ご注意ください。
企業が考える採用面接の目的は?
企業側が考える採用面接の目的、それはもちろん、優秀な学生を採用することです。
これは、どんな企業であっても同じだと思います。当然ですが、優秀でない学生を積極的に採用したい企業はないでしょう(特別な事情で積極的に採用している企業もあるかも知れませんが、ここでは触れません)。
優秀な学生とは?
では、優秀な学生とはどのような学生でしょうか。GPAが高い学生でしょうか、サークルで代表を務めていた学生でしょうか、バックパッカー経験のある学生でしょうか、アルバイトで店の売り上げを伸ばした学生でしょうか。
企業の人事担当者がよく見かけるこれらの学生は、優秀かも知れませんし、そうでないかも知れません。というのも、この情報だけでは本当に優秀かどうかは分からないのです。
そうなると、どのような観点で優秀と判断しているのでしょうか。
それは、入社後に企業にとって利益を生む人材かどうか(あるいは、利益を生む人材に成長するかどうか)という観点に他なりません。これを聞いて、どう思われるでしょうか。当たり前だと思われるかも知れませんが、たとえ中途採用の面接であっても、日本以外の国の企業が行う面接であっても、企業に利益をもたらさない人材を雇用する意味はありません。
利益を生む人材の判断方法は?
上述の通り、入社後に企業にとって利益を生む人材かどうかを見極めることが、人事担当者の目的となるわけですが、では具体的に何を見ているのでしょうか。
GPAが高くても、サークルで代表を務めていても、企業において利益を生み出せるかどうかは分かりません。なぜなら、学生時代の活動の成果が、企業の事業に直接結びつくことはほとんどないからです。
そのため、人事担当者は学生の学生時代にあげた成果や実績ではなく、学生のポテンシャルから入社後に活躍しているシーンを想像し、合否を判断するのです。
どのような質問でポテンシャルを探るの?
ポテンシャルを探るために用いる一般的な設問は、「ガクチカ(学生時代に力を入れたことは何ですか?)」です。
ここで紹介したいのが、コンピテンシーという概念です。コンピテンシー(competency)とは、「能力」を意味する英語ですが、採用の場で使われる際は一般的に「成果につながる能力」を指します。人事担当者は、「ガクチカ」の問いからこのコンピテンシーを見極めています。
具体的なケースをご紹介します。
サークルで代表を務めていた学生の例

学生時代に力を入れたことは何ですか?

大学のボランティアサークルでの活動です。私は、代表を務めていました

メンバーは何名で、日々どのような活動をしているのでしょうか?

4学年合わせて40名程度のサークルで、大学近隣の地域に関わるボランティアを行っています。

サークル活動において、最も力を入れて取り組んだことがあれば、教えてください。

3年生の時に、毎年実施している地域祭りボランティアについて、新入生用のマニュアルを作成したことです。
ここまでの会話の中で分かることは、中規模のサークルで代表を務めており、マニュアル作成を行った経験があるということです。しかし、人事担当者はこれらの情報にはほとんど興味はありません。
なぜなら、サークルに所属していたという事実や、新入生用のマニュアルを作成したという成果は、企業において成果につながる能力とは限らないからです。立候補者がおらず、じゃんけんで負けて代表をしているのかも知れませんし、肩書きだけで役割は何もないかも知れません。
続くやり取りを見ていきましょう。

なぜマニュアルを作成したのですか?

私がまだ1年生の頃、サークルに入ってすぐに地域祭りボランティアに参加しました。大学がある地域の5000人規模の祭りで、露店ブースの設営やお神輿の誘導、ごみ拾い等を行いました。祭りは真夏に3日間続くため、勝手が分からない1年生だったということもあり、体力的にも精神的にも疲弊したのを覚えています。また、疲労からか、私含め同じ1年生のメンバーにはミスを連発する者や体調不良で休むものが何名も出てしまいました。先輩方に迷惑をかけてしまったので後日謝罪しましたが、毎年1年生はそうなってしまうと言われました。そこで、翌年の同ボランティアにおいて、新1年生に対し、昨年のボランティアでの自分達のミスの内容を伝え、同じことが起きないように指導しました。その結果、例年に比べミスの数や、体調不良者が減りました。その経験から、3年生になった時の同ボランティアのタイミングで、活動の質をより向上させたいという思いから、1年生への指導内容を細かく文書にし、マニュアルを作成しました。
ここで分かることは、この学生は、自身や周囲の失敗を、次の取り組みに活かした経験があるということです。この後さらに、「マニュアル作成の際に、盛り込む情報はどのように決めましたか?」「周りのメンバーから、反対意見などはありましたか?」などと、より詳しく質問していくことで、以下について推測できます。
■失敗経験をどう活かす人間か
■何かを作る際、どのような行動をとる人間か
■周囲のメンバーと対立した際、どのような行動をとる人間か
これらはつまり、ある特定の場面において学生がとった行動の情報です。こういった情報をもとに、入社後のシーンを想像し、成果につなげることができる人間かを見極めるのです。
これらはあくまでも一例ですが、他のケースにおいても共通して言えることは、人事担当者はコンピテンシーを見極めるために、「ガクチカ」の問いから特定の場面での行動情報を引き出そうと何度も深掘りしていくということです。
おわりに
今回の記事では、新卒一括採用の面接において、企業側が見ているポイントについて紹介しました。
「コンピテンシー(competency)」という、なかなか聞き馴染みのない言葉も紹介しましたが、実は人事界隈では、よく使われている言葉なのです。
面接の対策として、面接官が使っている参考書を読んでみるのもアリかも知れませんね。
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