自分の知識量を増やすにはどうすればいいでしょうか。
この、答えのないような問いに対して、今回はアカデミックの視点から、一つの考え方をご紹介したいと思います。
今からご紹介するお話は、あくまでも社会の中でうまく生きていくための処世術のようなもので、「個人の記憶力や暗記力の強化によってテストの点数が上がる」などといった閉じたお話ではございませんので、ご注意ください。
優秀なあの人は「集合体」である
一体、何を言っているんだ・・・、と思われたことでしょう。この言葉の意味を、たとえ話を用いて、できる限りわかりやすくご説明します。
たとえば、Aさんが仕事でその優秀さを発揮して、上司から評価され、褒められたとします。すると、そのことを知った周囲の同僚や仲間たちが、「すごい!」とAさんを称えました。
この時、上司が評価したのは、Aさんの何でしょうか。周囲の人々は、Aさんの何が「すごい!」と言っているのでしょうか。
ここで、少し時間を遡ってAさんの普段の仕事の様子を見てみましょう。確かにテキパキと業務をこなしているようですが、よく見てみると、使い古した手帳がAさんのスケジュールを管理していて、その傍らでは、パソコンによって綺麗な資料が作成されています。Aさんのわからないことはインターネットや専門書、あるいは同僚が教えてくれています。「上司から評価されるような優秀なAさん」は、Aさんを取り巻く、あらゆるモノや人々との密な関わりの中で実現していることがわかります。
つまり、上司や周囲の人々が評価している対象は、「Aさんの内側だけで完結するような、Aさんに宿っている能力そのものを通したAさん自身」ではなく、「Aさんと、Aさんを取り巻くモノや人々、環境などが密に関わって織り成す集合体を通したAさん」であることに気がつきます。
反対に考えてみると、「上司から評価されるような優秀なAさん」から、仕事中に、手帳やペン、パソコン、専門書、周囲の人々、デスクやチェアなどを、どんどん取り上げていくとどうなるでしょうか。おそらく、困った顔をして「仕事にならない」と言うでしょう。そうなってしまえば、もうそこには「優秀なAさん」は存在しないと言うことができるのではないでしょうか。
このような考え方をすることで、社会の中で各人が有能に振舞っている現状を、骨格を崩さずに理解することに繋がるのではないか、と様々なアカデミックの分野で言われています。
ある人の内側(脳内)に、ある知識が無かったとした時に、その人を「無能だ」と判断するのは表面的な評価でしかなく、その知識が無かったとしても、その知らなかったことを親友に聞くことができたり、スマートフォンですぐに調べることができ、何の支障もなく生きることができます。こうした人々の「日常の中の有能さ」を説明するために、アカデミックの様々な分野にて、上記のような考え方「アクターネットワーク理論」が用いられるようになりました。
大切なのは「どうすれば知ることができるか」を知ること
「なるほど、そんな理論があるのか」と思われた方もいらっしゃると思いますが、よく考えてみると、あなた自身も(そして私も)日常的な生活の中で、当たり前のようにモノや人々、環境などをうまく使って有能に振舞って暮らしています。
これを「意識的に」実践することで、今回のテーマである「知識量を格段にアップさせる」に一歩近づくと考えています。
たとえば、あなたが何となく気になっている「スマートフォン」に関連する知識の量を増やしたいと思った時、すべきことは、「本屋でスマートフォンに関する本を購入して、そこに書かれていることを頭に叩き込むこと」ではありません。
今回お話した内容に沿えば、「スマートフォンの基礎知識に関することはこの本に網羅されている」、「最新機種の情報は、このITメディアが詳しい」、「オススメのアプリは、このランキングを見ておけば良い」、「小技や裏技は、このブロガーが多分一番詳しい」、「契約会社や料金プランなどについては、あの友人がピカイチだ」など、モノや人に分散されている知識を自身に紐付けることで、「スマートフォンのことをわかっているように振る舞うことができる自分」を作り上げることができます。
(もちろん、ご自身が人よりも詳しい何かの知識を、周りから求められた時には、開示することも必要です。)
おわりに
今回は、知識量をアップさせるには、知識そのものを叩き込むのではなく、「どうすれば知ることができるか」を知ることが大切だということを、「アクターネットワーク理論」という考え方に基づいてご紹介しました。
まずは、知識のありかを整理する事からはじめてみると良いと思います。
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